

――普段のお仕事と、プロボノ参加の時期は?
石田さん:通信会社で地方創生の事業を2020年から行っています。以前は社会貢献活動の推進も担当していました。
プロボノへの参加は2017年度からで、ハマボノには2019年と2021年に参加しました。
松島さん:製薬会社で医薬品の承認を与える官公庁、例えば厚生労働省などとの折衝業務を担当しています。プロボノへは2019年のハマボノに参加し、2020年と2021年は別のプロボノにも参加しました。
――参加したハマボノプロジェクトの内容は?
松島さん:2019年に石田さんと同じチームで支援したのが、「おもいやりカンパニー」さんという団体へのウェブサイト作成です。「おもいやりカンパニー」さんは、横浜市南区で活動する団体です。地形的に坂が多いため、地域で暮らす高齢者の買い物などの生活支援を行いながら、空き家を活用した多世代での交流拠点を運営しています。このプロジェクトの終了時期は、コロナ感染拡大が始まった頃でしたので、コロナ禍での情報発信にもウェブサイトが役立ったと聞いています。
石田さん:2021年のハマボノでは「濱なかま」さんという団体に事業計画立案の支援を行いました。「濱なかま」さんは港北区の城郷地域で、多世代の居場所づくり、地域情報発信に取り組む団体です。子育て世代の支援活動から始まり、今は高齢者向けの支援もしています。
今回は中長期事業計画の依頼でしたので、2~3年先までの行動計画を作成し、並行してビジョン、ミッションも一緒に策定して次のステージに進む支援もしました。具体的には工程表や行動計画、実践しやすいアイディア集などの資料を作りました。
――今回ハマボノに参加されたきっかけは?
石田さん:ボランティアに参加したきっかけは東日本大震災後の被災地ボランティアでした。また、先の自身のキャリアを考え受講していたとある大学のソーシャルビジネスアカデミーの一部講座を、サービスグラントの嵯峨代表が担当されていたことをきっかけにプロボノに興味を持ち、ハマボノ参加の前からプロボノに参加していました。そして、それまで地元、横浜での活動ができていなかったこともあり、ハマボノに参加しました。
松島さん:プロボノという社会人スキルを生かしたボランティア活動を初めて知ったのは、新聞や雑誌などのメディアでした。興味を持って調べたところ、近隣でハマボノ説明会が近日中にあるとのこと。そこで申し込んで参加したのがきっかけです。
――普段の仕事で時間が限られる中、それでもプロボノに参加したのはなぜですか?
松島さん:プロボノに参加する1年前までは本業のみで充実しており、ボランティアにはあまり関心がありませんでした。しかしここ数年、時代の変化で働き方改革など進みましたよね。長時間の残業をせず空いた時間を自己啓発や地域活動に、という社会や会社の流れになってきたことが、一つ理由としてあります。私自身も、本業に全てのリソースを費やすよりは、様々なところで時間を分けて活動した方が結果的に本業でも成果が出せるのではないかと考えています。
石田さん:歳を重ねるごとに、地域や自分の身の回りに対して何もしていないな、と感じるようになったことが理由としてありますね。被災地のボランティアに行ったことが後押しとなって参加するようになりました。
――支援先はどのように選びましたか?お住まいの近くを重視しましたか?
松島さん:「おもいやりカンパニー」さんは家から近いので、支援終了後も関われるのかなと思って選びました。支援終了後も何らかの関わりを団体さんと持ちたいのでしたら個人的には家から近い方がいいのかなと思います。ただコロナ禍以降、リモートも多くなったので、距離が離れていても支援する上では問題なくなってきたのかなと思います。
石田さん:地域に根ざした活動をしたい場合は住んでいる地域が良いかと思いますが、様々な経験をしたい場合は自分の基準で選ぶのがいいと思います。 私は地元以外に、2020年は他県のプロボノに参加し、地方と地元を行き来するような活動もしています。
――参加にあたって不安は?実際どうでしたか?
石田さん:体を動かすボランティアと違って、自身の日頃の仕事を活かせるかは不安でした。いわゆるジェネラリストと言われるような一般的なスキルを活かせるかというところです。
実際支援してみて活かせたのは、基本的コミュニケーションとドキュメント化の部分です。
まず、基本的コミュニケーションは人の話を聞くこと。仕事上でも相手の話を聞いてこそ前に進めますし、スムーズですよね。そこは本業ともうまく循環させながら支援できました。また地域活動団体は意思決定がトップダウンではないので、代表者さんは色々と悩みを抱えがちだと思うんですが、その悩みをお聞きするだけでもスッキリされたように思います。
ドキュメント化は議事録を作って提案資料を作る、つまり言語化することです。
団体さんは、ご多忙でなかなか言語化して残すところに至らないことも多いので、言語化することでお役に立てたと思います。
松島さん:不安は、普段の仕事上、ニッチな分野のスキルしか持っていないので、それで大丈夫かな、という点でした。
支援内容はホームページ作成の依頼でしたが、実際支援するにあたって高度なスキルはあまり必要ではありませんでした。
石田さんの仰るようなコミュニケーション力や傾聴力が最も大事だと感じました。逆に高度な技術で作っても支援先さんが使いこなせなくては意味がありません。それよりも支援先さんのニーズとその時の状況に合ったものを提供する。そこでコミュニケーション力や傾聴力が重要になってくるのだと感じました。
――プロボノチーム内でのコミュニケーションはリモート中心でしたか?
石田さん:メンバー全員勤務していたので基本的にはリモートで、土日に1〜2時間、足りない場合は平日18時、19時からなどの1時間で打ち合わせをしていました。対面でのコミュニケーションも必要ですので、新型コロナの感染状況を見ながら、集まれる時にはリアルで集まる。支援先にも感染状況を見ながら行ける時は行く。そのように活動していました。
松島さん:2019年に支援した「おもいやりカンパニー」さんのプロジェクトは、始まった時はコロナ前だったので対面中心だったのですが、最後の方だけリモートとなり、移り変わりの時だっただけにコミュニケーション手段の選択が大変でした。
――ホームページ作成の支援では専門知識を学びましたか?
松島さん:ウェブサイト作成は石田さんと一緒に本を買って勉強したのですが、ジンドゥーという簡単に作れるソフトがあり活用しました。それはパワーポイントを操作できれば作れるようなものになっていて更新もしやすいものです。
ですので支援先さんには、技術面というよりも情報整理をチームで支援した形になります。
――支援先と意見や方向性が違うことはありましたか?
石田さん:大きな方向性、支援内容はハマボノ運営事務局が段取りをして定まっています。その支援内容は募集の際にも明示されています。ゴールがないと支援先さんの要求があれもこれもと膨らんでしまう可能性もあるのですが、そこは決められているので、これから参加しようという方も心配されずに参加できると思います。
松島さん:細かい点で支援先さんと意見が食い違う場合は、結局コミュニケーション不足が原因かなと思います。最終的には折り合いがつくことがほとんどなので、やはりよくよく話し合うことが重要かと思います。
――参加されて新たな経験や発見、普段の仕事で得られなかった気づきは?
松島さん:支援先さんは団体として一つの目標に向かって進むのですが、そこに関わる皆さん一人一人の思いはそれぞれ違うんだなということが発見でした。そこは私たちプロボノメンバーの気づきだけでなく、支援先団体さんの中でも初めて知ったという方もいらっしゃいました。
境界線がはっきりしていない、個々人が違う思いを持っており曖昧な中で進んでいる、というNPO団体の仕組みがとても興味深かったです。
石田さん:松島さんのお話のように、支援先の関係者が多く意見がまとまらず、限られた時間の中でなんとなく方向性を決めることに最初は戸惑いがありました。ただ、このように地域に根ざした活動をされている方々がいてくださっているおかげで世の中が成り立っているんだなということに気付きました。そこから地域の広報誌などを興味を持って読むようになりました。
――プロボノ経験を経てご自身の生活やお仕事で得られたことは?
松島さん:参加してよかった点のひとつは、普段生活していたら聞けないような話を聞けたことです。参加メンバーは別業種の集まりだったので、例えば金融業界のメンバーに金融系ドラマの話題について聞いてみるなど、興味深い話を伺えたのがプロボノチームの醍醐味でした。
石田さん:達成感があったことです。今回は、作成するウェブサイトのことを誰も知りませんでした。そこで皆で調べて一から作り上げたという達成感がありました。大きな会社であれば仕事が細分化されて得にくいものだったと思います。
さらに人の話を聞くというところはプロボノ参加前よりも意識するようになりました。
本業では、、ややもすると、自社の持っている商材を提案するばかりになりがちですが、それがプロボノを経て、以前より相手のニーズがどこにあるのかを考えて仕事ができるようになったと思います。
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※この記事は、横浜市泉区役所主催の地域活動ゼミ「プロボノって何?経験や得意を活かした地域活動を知ろう!」(令和4年9月3日(土)開催)の経験者トークを編集したものです。
- 団体名
- プロジェクトの種類
- プログラム
- 【南区】おもいやりカンパニー【港北区】居場所づくり濱なかま
- ジンドゥー・Wixウェブサイト事業計画立案
- ハマボノ