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参加者の声
小川さん:写真右奥
IT系企業 研究開発職
小川淳さん

自分の強みを知り、それを地域社会でも活かしたい

※この記事は、横浜市泉区役所主催の、つながる!地域活動ゼミ「デジタル×プロボノ~ICTの業務経験を活かしたプロボノの事例から学ぶ~」(令和4年11月27日(日)開催)の経験者トークを編集したものです。支援先団体「おでかけ3」の実行委員会会長笠原實さん(写真後段中央)にもご一緒に登壇いただきました。

――「おでかけ3」の活動について教えてください。

笠原さん:「おでかけ3」は横浜市西区第3地区で移動支援のバスサービスを運行しています。西区は良い土地なんですが、お年寄りは山坂が多く外に出にくいため、その点を解決すべく、「生活創造空間にし」と「横浜市 藤棚地域ケアプラザ」が平成29年10月に共同計画として立ち上げたものです。山坂の多い地域で外出にお困りの方に、お年寄りの買い物など、地域の方の移動を支えています。

平成31年4月に本格的な活動を始め、利用者は現在197名の登録があり、毎週水曜と金曜に4便を運行しています。

移動を助けるということに留まらず、なかなか外に出にくい方のコミュニケーションツールにもなっています。例えばバス乗車時、添乗員さんとの会話で「今日はどうしたの?」「何か変わったことはない?」と仲良くやりとりをすることで利用される皆さんの生活を支えたり、さまざまな情報を得られたりするメリットがあります。

「おでかけ3」は、更にサービスに関わっていただくため、地域のお祭りに参加するなど、さまざまな試行錯誤もしてきました。

昨夏は、乗車の際に商店街の割引券をお渡しして買い物のきっかけしてもらうことで、商店街とのつながりを作る試みを実施しました。「おでかけ3」のニュースも発行しています。

そうした積み重ねで、地域の方の信頼を得ている実感もあります。新型コロナウイルス感染拡大でしばらくサービスを中断していたところ、地域の方々より、困っているからと再開を望む声が上がっていました。人と人、人とまちをつなぐ「おでかけ3」です。

 

――ハマボノでのプロジェクトについて教えてください。

笠原さん:ハマボノとの繋がりは、西区役所からの紹介がきっかけです。さまざまなことを相談できるということで、新たな利用者や協力者を増やしたいと相談をしました。そこで、ハマボノ1DAYチャレンジで、活動を広く伝えられるホームページを作っていただきました。

そのプロボノチームの中で支援していただき、今は実行委員となっていただいたのが小川さんでした。

 

――小川さんの普段のお仕事とプロボノ参加のきっかけは?

小川さん:私はIT企業で30年勤務し管理職をしています。専門は通信の分野になります。具体的には現在、技術戦略の立案と取りまとめをしています。

この業界に入ったのはインターネット黎明期で、メールと簡単な掲示板があった程度でした。ですが、地球の裏側にメールが届きすぐに返事が来ることに衝撃を感じて夢中になり、世の中の変化を予感して入りました。

プロボノを始めようと思ったきっかけは新型コロナウイルスの影響でした。コロナ禍の前はいわゆる会社人間で、深夜まで残業をし、週休0.5〜1日という生活をしていました。

しかし感染拡大に伴い在宅勤務が増え、更に社会全体のオンライン化、学校の授業やワクチン接種予約など、スマートホンの画面を通して、個人で社会と向き合っている感覚になりました。元々私は、会社一本足打法という時代は終わるだろうなと予測していましたので、個人で社会とどう繋がっていくか、この課題からは今後逃げられないだろうなと思いました。

 

――その課題意識からプロボノ参加へと行動した経緯は?

小川さん:行動するヒントになったのが、たまたま観た地方発のYouTube配信でした。地域の魅力を週1で発信するもので、最初の緊急事態宣言から3週間も経たずに放送を開始していました。

トマトが得意な農家さんが育てたトマトの特徴を、飲食店さんがそのトマトをどうおいしく料理しているかが紹介されていました。ペンションのオーナーさんがペンションをスタジオとして貸し出し、地域でイベントを企画しているような方が番組の構成を考えたり、司会をしたり、農家や飲食店、宿泊業者は地域の魅力をアピールしていました。

この方達は元々個人事業主なので自分の強みを持って社会と向き合っています。地方なので皆がその強みを理解しています。その強みの組み合わせを変えて毎回番組が作られていました。それぞれの人の強みがはっきりしていて、それを周りが理解していました。やはり社会と向き合う第一歩というのは、自分の強みをはっきりさせることなんじゃないかなと思いました。

じゃあ自分の強みはなんだろう?と考えると、ぼんやりとしか描けなかったんですね。

自分の専門はICT関連、いつものお客様でない方は何をしたら喜んでくれるのだろう?役職はあるけど、だからメンバーはついてきてくれるのかな?英語は話せるけど、だから何になる?会社の中での強みが社会にどう生きるのか、会社の看板なしで自分が社会に何ができるのかがわかりませんでした。

自分の強みを、周りの人がどう喜んでくれるかを見定めながらスモールスタートで始めたい、そう思ったのがボランティア、プロボノを考えたきっかけでした。そこでいいタイミングでハマボノの募集があったということです。

 

――そこで出会ったのが「おでかけ3」ですね。実際にどう支援されましたか?

小川さん:「おでかけ3」のプロジェクトに応募したのは、他のプロジェクトと比較しておもしろいかな、WEBサイトを作ったことはなかったんですが自分のバックグラウンドと近いかなと思いまして応募しました。

メンバーは全部で4人、全員IT系の勤務でしたが全員がもちろんそれぞれ初対面。プロボノ経験があったのは1人でした。

1DAY当日までの準備期間が1ヶ月、1日で本番という短期間のプロジェクトです。最初にオリエンテーションがあり、その後ヒアリングをしまして、本番前に暫定版を作った方が良いなと思いました。というのも、「おでかけ3」にとって初めてのホームページでしたし、実行委員の方の中にはホームページというものをよく知らない方もいたので、事前に暫定版を見ていただいて、実行委員の方にイメージを掴んでいただいてから本番を迎えた方がいいだろうなと思ったのです。

そこで本番1週間前に暫定版をリリースしました。それまでの打ち合わせはオンライン上で2回、あとはメールのやりとりでした。実働時間は2〜3時間/週で、時間をかけたのは、サイトマップをどうしてどう作るかというところでした。実装は1週間で、暫定版を作りました。

1DAY当日は実際に見ていただき、レビューと運用説明を中心に進めました。暫定版について、ここはもっとこうした方が想いが伝わるというようなレビューを受けました。またホームページは運用し続け新しい情報を載せ続けてこそ意味があるので、今後の運用を実行委員会でやっていけるように説明を進めました。

そのホームページは(https://odekake3.jimdofree.com/)今も運用されていて、見ていただくと新しいニュースが載っていますし、利用案内、地図や時刻表など、最新のものを見られます。

 

――参加してみてどう感じましたか?

小川さん:振り返ってみると、困ったことはありませんでした。メンバーや実行委員の皆さんのおかげで、かなり順調に進んだかと思います。経験が無かったホームページ作成も難しくなく、使用したジンドゥーというソフトはPowerPointのような操作感で、高度な技術は必要ありません。

やる前は緊張していたんですが、会長の笠原さんから、「魔法にかかったようだ、こんな立派なものを作っていただいたのでぜひ多くの方に見ていただきたい」、というお言葉をいただいたときに、嬉しさと同時に肩の力がふっと抜けたような気持ちになったことを覚えています。またハマボノのメンバーとは今でも飲み会などの交流があります。

 

――ハマボノ終了後も支援先で活動を続けられているとのことですが、その理由は?

小川さん:はい、ハマボノ後の活動後、立場を変えて「おでかけ3」の実行委員会に入りました。

プロジェクト終了で達成感はありましたが心残りもありました。というのも、先ほど笠原さんも触れられていましたように、「おでかけ3」のハマボノへの依頼の目的が元々、新規利用者を増やしたい、協力者を増やしたいというものでした。しかしホームページを作っただけではこれは達成できない。ホームページを作ったのはほんの入り口だったので、これをやり切りたいなと思ったわけです。

さらに実行委員の皆さんが明るくてポジティブなこと、山坂の多い急なところで活動している意義を強く感じていたところで実行委員へのお誘いを受け、メンバーに入ることにしました。

 

――「おでかけ3」では具体的にどんなことをしていますか?

今は月1回の会合に出たり、デジタル面でのサポートをしています。

具体的に活動したこと一つにYouTube動画があります。動画を仲間と撮影し私は主に編集をしました。地域のゆるキャラが実際におでかけ3に乗ってみるというものです。横浜市のYouTubeチャンネルに上がっています。

他にも実行委委員会のメーリングリストを作りました。実行委員会内での情報共有が早くなりましたし、一体感が生まれる効果があったと思っています。

また、ダッシュボードのように乗客数の推移が出ていたり、ボタンを押すとバス停ごとの数字が出たりするツール(おでかけ3 DX ダッシュボード)も作りました。これを使ってデータ分析してみると、気温が高いと利用者が減るということがわかり、そこで昨夏に商店街と協力して、暑い中乗ってくださった利用者に商品券ドリンク券などを出す施策をやりました。

こんなふうにデジタルの世界と実世界、「おでかけ3」の世界をさらにうまく結びつけられたらいいなと思って活動しています。

 

――「おでかけ3」の実行委員としての活動をどう感じていますか?

私にとって「おでかけ3」は、仕事では得られない直接的な反応を得られる良さがまずあります。

ITというのは、直接消費者の方と接することがない裏方で、そこではなかなか味わえない、直接社会と向き合えている感じがありました。ホームページを見て協力者への応募が増えているというということを聞いて、そういった直接的な反応を感じられるのは良いなと思っています。

また、新しい仲間と居場所、会社の看板がなくても社会と向き合えているというところにも、私はご縁に恵まれて幸運な事例なのかもしれないと感じますね。

 

――最後に、プロボノ参加に関心のある方にメッセージをお願いします。

冒頭の「強み」の話に戻りますが、プロボノは強みにつながる気づきを得る場だったと思っています。「おでかけ3」、プロボノ活動は、職場とは違う自分を照らすスポットライトでした。仕事で上司や同僚から「小川さん〇〇が得意なんですね」「〇〇が好きなんですね」と言われて、それが気づけば強みになった経験は皆さんもおありかなと思います。

それをもう一つ別のスポットライトとして気づきを得ることができる、そんな場に今のプロボノがなっているように考えています。

私の場合の強みは、ITの知識といろいろなソフトウェアを使いこなせること。私がITオタクで、専門以外のことにも興味を持って手を出し続けていたということなんですが、それが実は強みになっていたということに気づけました。

また実行委員の方からかけていただいた言葉で気づいた強みもあります。会合の帰りに「小川さんは他の人を応援する発言が多いですね」と立ち話で言われたことです。会社では言われたことが無かったので、自分にこういった部分があったのかと驚き、会社でも「おでかけ3」で築いた部分を出していきたいなと思って行動しています。

“プロボノ”というとどうしても、地域のため、人のため、“GIVE”するというニュアンスが強い言葉だと思います。ただそれと同時に何を“TAKE”するのか、自分のために何が得られるのかを併せて考えること。それがプロボノ活動を充実させるコツかもしれません。

とはいえやってみないと始まらないということもありますよね。

「この道を行けばどうなるものか。 危ぶむなかれ、危ぶめば道はなし。 踏み出せばその一足が道となり、その一足が道となる。 迷わず行けよ、行けばわかるさ。」(Byアントニオ猪木)ということですね。

 

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写真手前左から 藤棚商店会長 荻原 隆宏さん、生活創造空間にし 古田中 一輝さん
写真奥左から 横浜市藤棚地域ケアプラザ 志田 茜さん、おでかけ3実行委員会長 笠原 實さん、おでかけ3実行委員 小川 淳さん

 

 

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